薬剤師は常に人手不足でどこに行っても需要のある職業のため、妊娠・出産で一度現場を離れざるを得ない女性でも、産後休職期間を経て復帰して活躍する人が多いです。
産前はほとんどの方が正社員やフルタイムで働いていると思いますが、育児休暇明けに復帰するママ薬剤師の約60%が時短勤務やパート勤務への勤務形態の変更を選んでいます(日経DI6月号特集より)
小さな子供を育てながらの職場復帰は、悩みの大きさは異なれど誰もが不安を抱えながらのものになります。
ママ薬剤師が職場復帰する時に感じる4つの不安

ママとなった薬剤師が育児休暇を明けて職場復帰する時に、どんな不安を感じるのでしょうか?
人によって感じる不安は違いますが、誰もが必ず感じるであろう4つの不安についてまとめています。「こんなに不安を感じているのは自分だけなのかな?」と思うこともあるかもしれませんが、小さい子供を育てながらの職場復帰は誰もが不安を感じるものです。
仕事と家事・育児の両立ができるかという生活面での不安
仕事復帰するママがまず1番に感じる不安といえば、仕事と家事育児の両立ができるのかという不安です。
仕事をしていたときは家に帰って食事を準備したり洗濯をしたりといった家事をこなす程度だったとしても、復帰後はそれに加え子どもに関する世話をしなければなりません。
また育児休暇中は仕事のことを一旦忘れ育児に集中できる時間が増えますが、復帰となると子供と接する時間も減ってしまいます。
「なんで仕事と家庭のことを、両方うまくできないんだろう」
と、仕事と家事育児のバランスをとるのが難しくなり、悩むことも増えてきます。
知識面で遅れをとって、仕事に付いていけるかという不安
育児休暇中は慣れない育児に追われ、仕事のことを考える時間や勉強する時間も減ってきます。そんな中でいざ職場に復帰するとなったときに、「知識の面で遅れをとっていないだろうか?」という不安が出てきます。
薬剤師として働いていると、毎月のように新薬が発売されその薬に関する勉強会なども開かれます。
育児休暇中は薬剤師の情報誌などを読み積極的に情報を取り入れない限り、新しく販売された薬の情報は入ってきません。
また育児休暇の時期が調剤報酬の改訂の時期に重なってしまうと
- 各種加算・技術料の算定要件が変更になる
- 薬学管理料の点数や算定の方法が変わる
など見たこともない加算が新しく追加されたり、これまでは算定できていた加算を算定できる条件が変わったりと、復帰してみて制度がガラッと変わって浦島太郎のような気持ちになる場合があります。
子どもを保育園に預けることへの不安
育児休暇中は毎日子どもと過ごし、「少しは1人の時間が欲しいな」と思いながらも子どもの成長を楽しみながら生活をすることが出来ます。
しかし育児休暇が明け復職するとなると、保育園に預けて働かなければなりません。
いずれにしろほとんどのママが年少さんになる3歳の年から保育園や幼稚園に預けることになりますが、復職する場合は0歳〜2歳くらいの未満児として保育園に預けます。
- まだ言葉も喋れないのに、集団生活は大丈夫かな
- こんなに小さいのにママと離れて寂しくないかな
- 通い始めたら風邪や怪我など、可愛そうな思いをさせることになるのかな
など、初めて預ける場合はなおさらに不安なことが多くなります。
復職するママがみんな通る道とはいえ、まだ小さいわが子を保育園に預けることには不安を感じてしまいますよね。
復帰する職場での人間関係が不安
復職する職場が以前働いていた職場だったとしても、育児休暇中にメンバーが変わっている場合もあり、人間関係について不安に思うことも多いです。
復職前は人間関係も良好で働きやすい職場だったとしても
- 復帰後残業が難しいなど、周囲が期待しているような働き方が出来ない
- 子どもの発熱や行事などで、急な休みが多くなる
などの理由から、以前はうまく行っていた人とギクシャクしてしまうこともあります。
薬局薬剤師の現場は常に人手不足なので、復帰する=以前のように働いてくれる人員の1人として考えられてしまうので、双方が思うような働き方が出来ずにうまくいかなくなるパターンが多いです。
職場復帰で感じる不安はどうやって解消する?不安を解消するためのポイント

復帰前にとても不安に感じていたことでも、いざ復帰してみると大丈夫だったということもあります。
しかし出来るだけ復帰前に取り除ける不安は取り除いておきたいですよね。
そこで職場復帰の時に感じる不安を解消するためのポイントを、まとめてみました。全て実行するのは難しいかもしれませんが、出来る範囲で対策をねっておくと心配なことが減ります。
仕事と家事育児の両立に対する不安を解消するためのポイント
まずは家事と育児をうまく両立できるか?という不安を解消するためのポイントです。
家事と育児の両立は1人で全て行うことはなかなか難しいです。職場への理解と、パートナーとの情報共有・連携が鍵を握ります。
復帰後働く職場が子育てに理解がある職場なのか確認しておく
復帰後に働く職場が子育てに理解がある職場なのかは、とても気になるポイントです。
- 有給は取得しやすいか
- 他にもママ薬剤師が活躍しているか
- 職場の雰囲気が良好そうか
など、ママ薬剤師に優しい職場なのかを事前に確認しておくことで復帰後の不安が薄れます。
新しい職場だと確認するのはなかなか難しいかもしれませんが、患者さんとして一度利用してみるという方法で職場の雰囲気を確認する人もいるようです。
復帰後どんな条件で働きたいのか、休みや勤務時間の希望を勤務先としっかり話し合う
育児休暇前と同じ職場に復帰する場合もそうでない場合も、必ず自分が復帰した後どんな条件で働きたいのか、復帰先の上司と話し合っておくことが大切です。
フルタイムで働いてバリバリ働いていると、どうしても復帰後も同じように働いてくれるという期待を持たれてしまいます。
- 復帰後フルタイムで働くのか、時短勤務で働くのか
- 残業や休日出勤が難しくなること
- 子どもの行事や急な病気で休むことが多くなるかもしれないこと
など復帰後の働き方について、具体的に話をして理解を得ておきましょう。
家事・育児の分担や協力について、パートナーと連携を取る
育児休暇中も慣れない育児をしながらの家事で大変な日々を過ごしていますが、復職するとなると仕事をしながら家事育児をこなさなければいけなくなります。
子供を保育園に預け始めることになるため、普段から行っていた家事に加えて保育園の送迎や準備なども行わなければならずママの負担は増えるばかりです。
「今まで毎日やっていたんだから家事や育児を当然に出来るだろう」
とパートナーが思ってしまっていると、お互いに不満がたまりギクシャクしてしまいます。
- 働き始めたら家事・育児の負担が増えること
- お互い大変な部分はあるけれど、分担したりこれまで以上に協力して欲しいこと
など、協力しあい連携をとっていきましょう。
ブランクがあって知識面で遅れをとらないかという不安を解消するためのポイント
薬剤師の働く現場は常に新しい情報でいっぱいです。産後休んでいる間に、知識の面で取り残されていないかどうかはとても心配ですよね。
知識面での心配は、休暇中に自宅にいながらでも解消できるのでやっておくと復帰する際の自信につながります。
育児休暇中に薬剤師の情報誌などを利用し最新の情報を勉強しておく
育休中などで一旦現場を離れてしまうと、新しい情報がなかなか入って来づらく復帰したあと仕事について行けるのか心配になってしまいますよね。
ネットでも情報収集できますが、薬剤師のための月刊誌を定期購読していると新薬の情報や副作用情報など、正確な情報が手に入るのでオススメです。
- 日経DI
- クレデンシャル
など、まずは職場で定期購読していて馴染みのある月刊誌を1冊購読して情報面で遅れを取らないように心がけましょう。
復帰後に可能な範囲で研修など積極的に参加してみる
知識のことで遅れをとっていないか不安になっているのであれば、復帰後に職場で行われる研修・加入している薬剤師会の主催する勉強会などに可能な範囲で参加してみましょう。
無料で参加できる勉強会も多く、最新の情報や実務に役立つ情報を得ることが出来ます。
子供が小さいと参加が難しいこともありますが、予定が合いそうな研修があれば積極的に参加して勉強していくことで自信につながっていきます。
子どもを保育園に預けることへの不安を解消するためのポイント
これまで自宅で見てきた大切な子供を、保育園に預けることに不安を感じないママはいませんよね。
保育園に通い出すと自分の都合だけで仕事の予定を組むことが難しくなります。急な呼び出しやイレギュラーな事態に対応出来るように、様々な事態を想定して対策をねっておきましょう。
急な病気や怪我のときにお願いできるかかりつけの小児科を見つけておく
子どもを保育園に預け始めると、慣れない園生活やまだ体も小さく免疫力も低いことなどから、すぐに病気をもらってきて小児科にかかる機会が増えてきます。
仕事中急に呼び出されて病院に連れて行く場面も多くなりますので、予めかかりつけとなる小児科を決めておくと安心です。
- ネットからでも予約がとれる
- 開院時間や家・職場からの利便性が良い
など、通いやすい小児科が近くにあるかチェックしておくといざという時に慌てずに済みます。
急な病気などで仕事を休まざるを得ない場合の対応を考えておく
先述したように、復職して子供を保育園に預けだすと急な病気で保育園から呼び出されることが度々あります。
また子どもの体調不良が続くと自宅で看病する必要があるため、仕事を休み子供に付き添わなければなりません。
全てをママがこなすとなると、職場にも負担がかかり自分の仕事も滞ってしまいます。
- 近くに親など頼れる人がいる場合は、応援を要請しておく
- パパと交代で休みを取れるように話し合っておく
- 病児保育について調べておく
など、ママひとりで対処するのではなく周囲の協力も得ながら子どもの体調不良に対応していきましょう。
復帰する職場での人間関係に対する不安を解消するためのポイント
やはり復帰する際に1番心配なのが人間関係です。これまで良好だった職場の人間関係が、復帰後に急にうまくいかなくなることもあります。
積極的にコミュニケーションをはかり、自分が置かれている環境への理解を示してもらうことが大切になってきます。
急な休みや早退など、出産前と同じような働き方が難しいことを説明し理解を得る
忙しい調剤薬局の現場などでは、復帰したらすぐ人員的に【1】として数えられ出産前と同じような働きを期待されます。
復帰の際にきちんと
「出産前のように残業は難しい。でも出来る限り協力して働いていきたい」
など気持ちを伝え、勤務時間や休日などについてもハッキリと話し合い決めておきましょう。あやふやなまま復帰してしまうと、お互いに「話が違う」と不満を持つ原因になりかねません。
自分の都合だけではなく、他の薬剤師が困っているときは助け合う
子どもが小さいうちは急な休みや早退が増えがちですが、周囲もきっとそれを理解してくれていると思います。
その状況に甘えて「子供が小さいから仕方ないでしょ」と当たり前のように思ってしまうと、周囲から反感を買い人間関係がギクシャクしてしまうことも。
自分の大変さばかりを考えるのではなく、いつもフォローしてくれている職場の人たちのことも考え、困っている人がいたら可能な範囲で休みを交代したり仕事を買って出たりすることで働きやすい環境を生み出しやすくなります。
復帰してみて働きづらさを感じたらどうする?転職を視野に入れた行動も

復帰してみると働きづらさを感じて、これまでのように働けない自分に苛立つこともあります。
周りに迷惑をかけたくないと、我慢して働き続ける人も多いですが不満を抱えながら仕事と育児を両立していくことはとても難しいことです。
職場の理解はあっても、育休前のようにうまくいかないこともある
職場の人たちは十分に理解してくれていても、復帰してみたら思うように働けず周りに気を使ってしまうこともあります。
子どものことで休みが多くなってしまうと、仕方がないと思いながらも一緒に働いている人たちの仕事量が増え、フラストレーションが溜まり始めます。
育休前はうまく行っていた人間関係が悪くなったり、自分自身も思ったような働き方が出来ずにストレスが溜まってしまいます。
元々いた職場だからこそ、復帰してから悩むことも多くなってしまいます。
無理は禁物!家事育児とのバランスがとれる働き方も考えよう
育児休暇前と後では環境がガラッと変わりますので、思うような働き方が出来ないのは仕方ありません。
会社の期待に答えたいという気持ちもありますが、私生活と仕事とのバランスの取れる働き方を考えていく必要があります。
復帰した職場で復帰前に約束した条件と違った条件で働いてほしいとお願いされてしまったら、何となく恩もあるし断りづらいかもしれません。
しかし無理して働き続けても仕事も家庭生活もうまくいかず、消耗しながら生活していくことになりかねません。
- もう少し労働時間を減らしたいけど、上司が納得してくれなくて困っている
- 急な休みや早退などに対応できる、人員にゆとりのある職場で働きたい
そう思ったら、転職を視野に入れて行動してみませんか?
薬剤師専用の転職サイトを利用すれば、ママ薬剤師が多く活躍している職場や福利厚生が手厚く働きやすい転職先の紹介をしてもらえます。
自分で環境のいい職場を探すのは内情もよく分からないので大変ですが、専門のスタッフが自分と転職先との間に入って交渉などもしてくれるのでお任せできて安心です。
まとめ
育児休暇を終えて職場復帰をする時には、誰もが不安を抱えながらの復帰になります。
復帰後の生活を想定して対策をねっておくと不安は減りますが、いざ働きだしてみると思いもよらなかったトラブルが起こることもあります。
育児復帰後に人間関係がうまくいかなくなったり、働きづらさを感じることも。小さな子供を抱えながら働いていく上で大切なのは、仕事と家庭のバランスをとることです。
無理して我慢せずに、働きやすい職場への転職も視野に入れて動いていきましょう。